7年前、父が肺がんと診断されたとき、医師からは「今生きているのが奇跡」とまで言われました。しかし、父はその後も半年近く生きてくれ、その間に相続準備を進める時間を与えてくれました。私には兄がいますが、父は兄ではなく私を相続の中心に選び、家や仏壇、お墓の管理も私に託すことを決めました。兄は神奈川に住んでいて、実家のことに関わりたがらず、また金銭的な問題で父との関係も良くありませんでした。そのため、父は私を頼りにしてくれたのだと思います。
父と一緒に、実家の土地を早めに売却し、その資金を相続税対策に充てました。また、生命保険や教育資金贈与、相続時精算課税制度など、父と相談しながら進めました。私自身の元建築士としての経験を活かし、土地の登記や相続手続きも自分で対応しましたが、情報不足や手続きの煩雑さに何度も壁にぶつかりました。父は肺がんで体力が落ちていく中でも、「これが家族のためになる」と言って前向きに準備を進めてくれました。その姿に励まされながら、私も全力でサポートしました。
手続きの中では、いくつかの失敗もありました。例えば、父が持っていた土地について、制度を理解しきれずに余計な税金が発生してしまいました。また、以前には祖母の生命保険の受取人を母に変更したことで、母の所得が増え、税負担が大きくなってしまったこともあります。それでも、父が「お前がいてくれてよかった」と言ってくれた言葉が私の支えでした。これらの経験を通じて、私は相続診断士の資格を取得し、周囲の人々の相談に乗れるようになりました。家族を守るためには、他人任せにせず自分で動くことが必要です。その過程で失敗もありますが、一つひとつ乗り越えた経験が大切だと感じています。
父の死後、私はシングルマザーとして2人の息子を育てています。長男には障害があり、生命保険信託を活用して将来の生活を支える計画を立てています。また、エンディングノートを作成し、銀行口座やクレジットカード、各種サービスの情報をExcelで管理しています。印刷した情報を家族が確認できるようにし、私がいなくなったときに困らないよう備えています。
父が最後に教えてくれた「準備の大切さ」は、私の人生を変えました。その教訓を、同じように家族を思う多くの人と共有したいと思います。準備は、家族への愛情を形にするための第一歩です。この学びを胸に、私はこれからも家族とともに未来を考え、行動していきます。
